一冊を読み切ろう

乳幼児は絵本、小学校低学年は幼年童話、
中学年以上になると長編物語というように、
子どもの年齢が上がるとともに本の内容は変わります(YA世代や大人を対象とした絵本もあるので、一概に〇歳は〇〇とはいいきれませんが…)。

絵本から童話へ、童話から長編物語への移行には個人差があり、文字の大きさやページの長さを判断材料に

「自分には読めない」

とステップアップをあきらめる子もいます。
今回は、高学年だけれど長編に苦手意識がある子のための文庫を紹介します。
それぞれが一話完結になっているため、どのタイトルからも読み始めることができますよ。

鉄道ファンならずともスイスイ読める集英社みらい文庫の『電車で行こう!』

電車大好き小学生3人組のT3(トレイン・トラベル・チーム)が、全国の鉄道に乗って旅をするシリーズです。
出発前の計画や車中での出来事、旅先での事件などT3には次々と問題が起こり、気がつけば読者はすっかりと物語の世界へと引き込まれてしまいます。

現在、21話(巻)まで発行されている『電車で行こう!』。
副題を読めば、どの地域の鉄道が登場するかがわかるので、居住地や旅行で訪れたことがある観光地を選ぶのはどうでしょうか。
私は九州在住なので、『GO!GO!九州新幹線!!』と『乗客が消えた!?南国トレインミステリー』を読みました。
この2冊はシリーズでは珍しく上下巻となっていて、本州から訪れたT3が福岡、熊本、湯布院を旅するストーリーです。

T3メンバーの高橋雄太、的場大樹に加えて、車両所で偶然知り合った森川さくらや雄太のいとこの川勝萌などが登場します。
本文のほかに、時刻表や路線図を使って解説もしてくれます。
鉄道初心者でも表と図を見ることで、速度や距離といった計算が必要な問題も解ける醍醐味が味わえます。

ホームに停車していたのは500系新幹線だった。
「やっぱ、かっこいいなぁ~」
発車時間ギリギリだったけど、思わず見とれてしまう。
まるで戦闘機のようなビシッとしたフロントノーズ。
他の新幹線では見られない青とグレーの塗装。
先頭車の運転席の周囲は黒く、ヘッドライトが輝くと、まるでロボットの顔みたいに見えるんだ。
少し古くなった500系はもう東京では走らない。
今は西日本や九州で『こだま』として使われている。
でも、鉄道ファンの中では今でも大人気の車両なんだ。
もちろん僕も大大大大好きな電車だ!
女の子は博多南駅のホームを不思議そうな顔をしながら見つめていた。
「こんなところから新幹線に乗れるなんて……私、全然知らなかったわ」
「ここは『博多総合車両所』内にある『博多南』って駅なんだ」
僕は振り返って言った。
ホームにある時計を見ると、時刻は8時20分。
「もう発車時刻だから、新幹線に乗ろう!」
―本文引用

上の本文の引用からもわかるように、一文が短く、改行が多いことで長編に苦手意識がある子もスラスラと読めるのではないでしょうか。一冊完読するだけで、一つの鉄道や車両に詳しくなれるのもうれしいですね。

『電車で行こう!』を出版している集英社みらい文庫のホームページには特設コーナーがあり、シリーズ紹介や鉄道マップの情報が掲載されています。文庫の試し読みができるので、物語の雰囲気をつかんでから購入することもできますよ!

電車で行こう! GO! GO! 九州新幹線! ! (集英社みらい文庫) | 豊田 巧, 裕龍 ながれ |本 | 通販 | Amazon

ゴールデンウィークに福岡に来た雄太は、偶然、出会った女の子のピンチを「電車の裏ワザ」で解決!!
女の子は人気急上昇中のアイドルで、お礼に熊本のイベントに招いてくれ、九州新幹線に乗ることに!

マンガやアニメを凌駕する小学館ジュニア文庫の『12歳。』

小学校中学年以上に人気のマンガとアニメ「12歳。」がオリジナルストーリーで楽しめる本が小学館ジュニア文庫から出版されています。
主人公の綾瀬花日と蒼井結衣の顔がそれぞれ表紙で描かれているので、書店でも簡単に探すことができるでしょう。端的に言うと小学生の恋愛や友情を描いた話なのですが、大人のわたしでも夢中になってしまうドキドキがたくさん詰まっていました。

現在、4歳の娘が小学6年生になったとき、『12歳。』のような学校生活を送っていると思うかと問われると?ですが、フィクションなのだから楽しく読めれば、それもアリかなと妙に納得してしまう構成です。

親世代が小学生の恋愛ときいて気になるのが、描写や言語表現ではないでしょうか。
6冊の『12歳。』を読みましたが、どの本にもキスシーンはありませんでした。
交際している男女(カレカノという言葉は頻繁に出てきます)が手をつないだり、頭をポンポンなでられたりといった、小学生であればOKといえそうな範囲で描かれています。

学校生活を主軸にしているので、転校生や教育実習生といったキーワードで一話を展開しているところも大人読者としては好感が持てます。
今回紹介する『12歳。~そして、みらい~』は、自習の課題として出された作文「将来の夢」について登場人物それぞれが悩むというもの。学年によって将来目指す職業が変わったり、交際相手と将来も一緒にいられるかを想像したりと、6年生ながらに真剣に考える姿があります。

「蒼井、勘違いするなよ」
桧山にそう言われて、さっきの悲しい気持ちが戻ってきたけれど、今度はもっと冷静に考えられる。
そうだよね、勘違いもいいとこだよね。それなのに、私、泣き出したりして……。
「関係ないのに、ごめんね。私、もう二度と、桧山の将来に口だしなんて……」
「あ~~~~~~~っ……、蒼井、やっぱり勘違いしてる!」
桧山は自分の頭をぐしゃぐしゃとかきむしった。
「言っとくけど!オレの将来の夢のこと、蒼井に関係ないって言ったのは、そーゆー意味じゃないから!えーっと、なんてゆーか・・・・・」
桧山は、あ~とか、ん~とか言いながら、一生懸命言葉を探して、そして言った。
「蒼井がしっかり夢を決めたみたいに、オレの将来の夢は、オレが!自分で!決めなきゃいけないことだと思ったからなんだ!!」
「桧山……」
そういう意味だったんだ。
「なのにオレ、迷ってばっかで……、情けなくて……」
―本文引用

正確な日本語ではなく、この年代の子どもたちが使う普段のしゃべり言葉を書いているのが『12歳。』の読みやすさの秘訣でしょう。ストーリーもさることながら、会話や描写が想像しやすいのも完読を目標にしている読者にとっては必須の要素といえます。

何度かの完読体験をすると苦手意識がなくなるため、女子の古典名作『赤毛のアン』や『秘密の花園』にも興味を持つようになるかもしれません。

12歳。~そして、みらい~ (小学館ジュニア文庫) | 辻 みゆき, まいた 菜穂 |本 | 通販 | Amazon

大人でもない、子どもでもない--そんな微妙なお年ごろ、12歳の少女のピュアな悩みと初恋、そして成長を描いた大人気コミックを、オリジナルストーリーでノベライズした第4弾。

「ギョギョ」でおなじみ角川つばさ文庫の『おしえて!さかなクン』

テレビで活躍中のさかなクン(東京海洋大学の客員教授)がおしえる魚の世界を文庫化した『おしえて!さかなクン』
一テーマにつき5~7ページを割り当て、さかなクンのおしゃべりとイラストで、魚の詳細がわかる構成になっています。監修・中坊徹次(京都大学教授)によるコラムも掲載していて、このシリーズ3冊を読めば魚博士といばれそうなくらい知識が詰まっています。
さかなクンが披露する漁師とのエピソードや幼少時代の出来事など、実際の体験にもとづいて話してくれるので説得力があります。

とってもおいしくて栄養いっぱい!!しかもお安く手に入るお魚といったらマイワシです。ところが最近、マイワシがたくさんとれなくなってしまい、数年前には、なんと!!一匹が千円を超えることもありました。ニュースにもなり、みなさんもおどろいたのではないでしょうか?
でも、さかなクンはそれほどおどろかなかったです。なぜなら、最近、各地で漁師さんの船に乗せていただいて漁に行っても、なかなかマイワシがとれないからです。同じイワシの仲間のカタクチイワシは、かぞえきれないほどたくさんとれるのですが、マイワシは漁師さんの大きな網でもまったく入っていないか、入っていても体が小さく、数えられるほど少ないことがほとんどです。大きなマイワシが少しでもまとまってとれると、漁師さんはおどろきます。
―本文引用

「マイワシ 今の日本近海は暮らしにくい?」というテーマで書かれた本文の引用です。
文庫の初版が2009年11月(2013年6月 11版)になので、その前後の出来事といっていいでしょう。

まずは文脈ですが、テレビに登場するさかなクンそのもののしゃべり言葉であることがわかります。
視聴者に向けたり、大学の講堂で解説したりしている雰囲気です。
漁獲量が減ったマイワシについて、後半ではマイワシの研究家の話、その生態や調理法について書いています。
理科が得意(好き)な子は、自分の興味の持てる内容の本を読むといいかもしれません。

ギョギョギョ!おしえて!さかなクン (朝日小学生新聞の人気連載) | さかなクン |本 | 通販 | Amazon

秋刀魚のひみつ、お魚たちの眠り方、歩いて移動するお魚?、ネコザメはペットにぴったり…朝日小学生新聞の人気連載。さかなクンの毎日はお魚だらけ!

何度も繰り返しますが、
一冊の本を読み終わったあとの達成感で、その後の読書人生は豊かになります。
学校が推薦する図書もいいですが、まずは子どもが好きな系統の本を用意してあげられるといいですね。