中学生の特殊能力が世界を救う!古事記を下敷きにした学園ファンタジー

2015年に発売された1巻を読むと同時に、次巻を心待ちにしていた児童が何人もいた物語です。2016年3月に三部作として完結しました。その結末も子どもにとっては満足できる内容だったらしく、「こういう本だったら、また読みたいな」と男子児童に言われたのを覚えています。
主人公の田代有礼の夢にでてきた猿が、「くるすの丘に、来い」と言ったのをきっかけにストーリーは展開していきます。アレイが小中一貫校の栗栖の丘学園に入学し、異能を持つ同級生や下級生、教師とともに異空間での戦いを強いられることになります。巻を読みすすめるごとに仲間(カンナギ)が増え、敵(黄泉ツ神)は強力になります。
この物語がおもしろいのは、各巻の序章に古事記を引用するところ。2巻には、次のようにあります。

ここに天児屋命・布刀玉命・天宇受売命・伊斯許理度売命・玉祖命、併せて五伴緒を支ち加えて、天降したまひき。ここにそのをきし八尺の勾璁・鏡、また草なぎの剣、また常世の思金神・手力男神・天石門別神を副へたまひて、詔りたまはく、「この鏡は専ら我が御魂として、吾が前を拝くが如いつき奉れ。次に思金神は、前の事を取り持ちて政せよ」とのりたまひさ。

もちろん、本文は現代語で書かれているので読むのに苦労はしません。中学生の会話のなかに異界を指す言葉や緊迫した表現があり、読むスピードを一層加速させるセンテンスになっているのです。

今はな。でも、きっと、だんだん、カクレドは広がってくる。俺とQが、最初に送りこまれたのは、北側校舎と東側校舎の角でだった。廊下の角でぶつかって、送りこまれたんだよ。そのとき、あいつらのカクレドは、まだ、今日みたいに広がってなくて、校舎の外は霧に包まれてた。天ツ神が、カンナギをあそこに送りこむのは、きっと、カクレドの中の世界に対応した、こっちの世界の領域の中に俺たちがいるときだけなんだ

読書を楽しんだ、その先に古典や日本史のおもしろさに目覚める子もいるかもしれません。けれど、大人がそれを見越して薦めたところで効果は表れないように思います。童話では物足りなくなった子へ、上手に手渡したい作品です。

天と地の方程式 1 | 富安 陽子, 五十嵐 大介

この春で中学二年生になる田代有礼は、おかしな夢を見た。猿に「くるすの丘に、来い」と言われる夢だ。その直後に引っ越しが決まり、できたばかりの公立の小中一貫校「栗栖の丘学園」に通うこととなる。中学二年生にあたる八年生の生徒はたったの三人。うちひとりは、とんでもなく数学ができ、とてつもなく馬鹿とうわさのQだった。関わりあいになりたくないと思った矢先、Qとともに異空間に閉じこめられる―。息つく間もなく展開される古事記を下敷きにした、学園異能ファンタジー第1巻!

天と地の方程式 2 | 富安 陽子, 五十嵐 大介

―神ガ、コノ地ニ、下ラレル。カンナギハ、神迎セヨ―。黄泉ツ神のカクレドから脱けだすことに成功した田代有礼たちは、再び猿から天ツ神の言葉を伝えられる。いつどこに神が下るのか、残る二柱のカンナギは誰なのか。答えがわからないまま、一年生の男の子が校内で行方不明になるという事件が起きる。その子を捜せと急きたてるように鳴る天ツ神のメロディが、田代有礼たちを、次の計画へと導く。

天と地の方程式 3 | 富安 陽子, 五十嵐 大介

ついに七柱目のカンナギを見つけだした田代有礼たちだったが、その直後、岡倉ひかるが影の大蛇にのみこまれる。勢いを増す、黄泉ツ神。はたして田代有礼たちは、地の底に通じる天ツ扉を開け、黄泉ツ神を封じ、この地を未曾有の災いから救うことができるのか。黄泉ツ神の予兆、天ツ神の先触れ。天と地が揺れるなか、カンナギたちが、新たな神話を紡ぐ。物語は大団円へ。古事記を下敷きにした、学園異能ファンタジー最終巻!