「おまえといっしょにいると、心があらわれるような気持ちがするぜ」

ひょんなことからルドルフは、
自分が昔住んでいた街が「岐阜」だということを知ります。そしてとうとう商店街から岐阜行きツアーの観光バスが発車することを突き止めるのです。

いずれ来る別れを予感していたのでしょうか。
イッパイアッテナはルドルフをこう評価します。

「そりゃあ、おまえがまよいねこで、なんとなくおれと立場が似ていたから、最初はがらにもなく同情して、めんどうを見てたんだけどな。そのうち、おまえってやつが好きになってな。それで、いっしょにくらしてるってわけだ。おまえは、いつでも明るくて、ほかのやつをおしのけて、自分だけいい思いをしようってところがぜんぜんない。おまえといっしょにいると、心があらわれるような気持ちがするぜ」

イッパイアッテナからの、
ルドルフに対する率直な気持ちです。
僕はこのセリフに、児童書としてのこの作品の良さが全て詰まっていると思いました。

ここまでのストーリーで、読者の子供たちは

イッパイアッテナってすげえなー

って思うはずですよね。
知恵をしぼって食料を調達したり、ノラいぬたちと喧嘩したり、そしてルドルフを優しく教育したり。大人の我々でも「イッパイアッテナ兄貴すげえよ」って思うので、子供たちもきっとそうでしょう。

そんなすごい存在のイッパイアッテナが、明るくて正直なルドルフに、最大限の賛辞を送る。
これにより子供たちは、
明るくて正直なルドルフの性格を無意識に肯定できるのです。

子供は明るく!
子供は正直に!
ただ単に言われてもピンとこないことを、ルドルフとイッパイアッテナという二匹の交流を通して、巧みに読者に伝えていると思うのです。