10代で妊娠、出産の現状

まだまだ嫌悪される学生の妊娠

過去に放送されたいくつかのドラマでは、10代で妊娠・出産する女性や、その家族の葛藤や愛が描かれてきました。
『14歳の母』では、主人公である中学生の家族が支え合い、無事に出産。
一方で『コウノドリ』では、出産直後、特別養子縁組制度により別の夫婦に赤ちゃんが手渡されました。
どちらのドラマでも、子供たちの妊娠・出産・育児の難しさがリアルに描かれていましたが、現実の日本社会においても、彼女たちの立場は厳しいといえます。

厚生労働省の統計によると、2015年に10代で出産した女性は1万1929人いました。
そのうち、14歳以下は39人だといいます。
しかし注目すべきは人工中絶の数で、出産する人数より多い1万6113人に上りました。

9月6日付の朝日新聞に女子高生で出産した子の取材記事が載っていました。
関西に住む高校3年生の女子生徒が、2年生だった今春、学校に隠し通したまま女の子を出産したそうです。
女子生徒がスーパー銭湯に行った際に、母親が彼女の異変に気付き、妊娠が発覚しました。 その後産婦人科に通い、モニターに映る赤ちゃんを見て、産みたいという気持ちが湧いてきたそうです。
しかし、それに対する医師の言葉はあまりにも冷たく、

「高校生なのに妊娠するなんて遊び回ってたんやろ。健診を受けていない人はここでは産めないよ」

と取りあってくれません。
他の病院も同様な反応を示し、5カ所目でようやく病院を紹介してくれたといいます。

医師側にも拒否する事情やリスクもあると思いますが、医師として疑問を覚えざるを得ない対応の仕方だと、記事を見て感じました。そこには、小学生、中学生、高校生での妊娠・出産に、まだ寛容ではない日本の現状が少なくとも影響しているのではないでしょうか。

今回の記事では、その数がもっとも多い高校生に焦点をあて、低年齢の妊娠に対する日本社会の支援の現状と、今後のありかたについて考えてみたいと思います。

14才の母

14才の母

支援1:学校のサポート体制

文部科学省によると、妊娠や出産で停学や退学になる校則を明記している学校は少ないそうです。
しかし、現実には、妊娠を機に学校を退学になったという声が全国の妊娠相談窓口などに寄せられています。

今の日本では、学校の支援は、全くと言っていいほど整っていません。

「 妊娠したら退学」

この事実が、10代で出産することの難しさの一つなのかもしれません。
妊娠を退学理由にすると明文化はされていないものの、事実上の問題行動として、退学を余儀なくされる学生たちが、後を絶ちません。

一方、海外に目を向けてみると、学業支援が整っている国がたくさんあることがわかります。
アメリカコロラド州にあるフローレンス・クリテントン高校は、州内から集める生徒が全員「母親か妊婦」という公立高校です。
生徒の220人のうち75%が母親、25%が妊婦。
校内には託児所があり、子どもを預けて授業を受けられる環境が整っています。

[Birth Mother] First Mother Forum: Crittenton today: Serving marginalized teens

[Birth Mother] First Mother Forum: Crittenton today: Serving marginalized teens

記事の冒頭で紹介した女子高生は、学校に知られると退学になってしまうことを恐れ、隠し通したといいます。
中学生や高校生にとっては、これから学校生活でやりたいことがたくさんあるでしょう。
しかし日本の現状では、それらを諦めざるをえません。

また、中卒と高卒での収入差はもちろん、就職できる窓口も全く違います。
妊娠を機に高校を退学し、パートナーとの新生活や子育てに夢を膨らませる生徒もいることでしょう。
しかし、現実は厳しいものです。 夫婦が離婚する割合は10代後半が最も高く、シングルマザーになれば、その多くは生活に困窮します。 改めて高卒の資格を取るにも、サポート校に通うのはお金がかかり、働き口もないため、生活保護に頼るか、性風俗業を選ばざるをえないケースも珍しくないのです。そうなれば「貧困」という悪循環が逃れなくなります。

妊娠は生徒自身の責任と捉えられます。
しかしながら、女子生徒が学校をやめることを余儀なくされる環境のままでいることは、間違っていると感じますし、 むしろ中退しないためにどうサポートするかを検討するべきではないでしょうか。
現状では、通信制や定時制高校への編入サポートを徹底することが、その具体案と言えます。日本の社会風潮から、学校にいづらくなった女子生徒の心をケアし、どんな形でも学校を卒業できるように支援する必要があります。

低年齢学生の妊娠・出産は、学校の支援だけでは到底解決できない問題です。
その他のサポートの可能性についても考察してみたいと思います。

支援2:家庭や周囲のサポート

テレビ番組の取材で、インタビューをうけた女性がこう語っていました。

「結婚して妊娠したら周りから『おめでとう』と言われる。しかし、10代で妊娠すると一切おめでとうと言われない」

まさに今の日本を表す言葉だと思いました。
10代で妊娠することを問題行動と捉えているのは学校というよりも、社会なのかもしれません。

「子どもが子どもを育てられるわけがない」
「おままごとみたい」

などのステレオタイプな言葉が彼女たちをを傷つけ、中絶という行動につながるのではないでしょうか。
またこの問題については、家族からも孤立してしまうケースも少なくありません。
学生で妊娠してしまった娘を持つ親の負い目、というのが先立ってしまい、最も側にいてサポートしなくてはいけない親が、妊娠した娘を受け入れることができず、「とにかく中絶」という選択しか見えていない場合が多くあります。
一番悩み、心が揺れ動いているのは、妊娠しているお子さん自身。
常に孤立させないように側にいることが大事で、暖かく、正しい方向に導いてあげてください。

・10代の妊娠は困難が多いので支援が必要
・10代で妊娠することは珍しいことではない
・嫌悪するよりも前向きな教育を
・生命は尊い

このように、周囲の人々の意識を変えることが、10代での出産をサポートすることに結びつきます。
学生の妊娠は、パートナーに責任感が不足していたり、能力が欠如しているケースが多いので、周囲のサポートは必要不可欠。特に若年齢になればなるほど、自己嫌悪と能力不足による問題が発生しますので、温かく根気強い支援が必要になります。

支援3:性教育の必要性

皆さんは、中学校や高校でどのような性教育を受けましたか?
私の場合、男子と女子は別れて授業を受けました。 保健体育の教科書に載っていることしか習いませんでしたので、 正直、妊娠のメカニズムがわかったのは、中学生三年生ぐらいのことだったと記憶しています。
今、その日本の性教育が問題視されています。
性の知識を広めると若者に性交渉などが氾濫し、性の乱れにつながるのではないかという考えがあり、学校側がしっかりとした性教育を避けている、と研究者は言います。
かわりに今の若者の多くはネットから情報を得ています。
それによって間違った知識を得てしまったり、避妊する方法を知らない人も少なくないのです。

学校が性教育を避けるようになった背景には、2002年に起こった出来事が関係しています。
きっかけは、厚生労働省所管の財団法人・母子衛生協会が中学3年生向けに作成した冊子「思春期のためのラブ&ボディBOOK」の回収騒動でした。

タブー視される日本の性教育   今のままで良いか? - Yahoo!ニュース

タブー視される日本の性教育  今のままで良いか? - Yahoo!ニュース

冊子にはコンドームの装着方法やピルの紹介などもあり、2002年頃、国会で「中学生の性行動をあおっている」といった激しい批判を受けました。 冊子は結局、全面回収されてしまいました。
この当時、国会や地方議会、マスコミを主舞台として

「過激な性教育が学校でまん延している」
「教室で性交渉の方法を教えていいのか」

といった批判が激しくなり、「性教育元年」と呼ばれた動きは教室から姿を消してしまったのです。

海外の例を見ると、いかに日本の性教育が停滞しているのかがわかります。
フランスでは、「科学」の生物領域に「女性と男性」という単元があり、 女性と男性それぞれ、妊娠・出産について必要な全てのことが教科書に載っています。
体の仕組み、妊娠、出産。そうした基本的な事柄に加え、中学校では多様な避妊方法を具体的に教え、高校では不妊原因と不妊治療について最新の科学的知見も紹介しています。

フィンランドの場合は、「人間生物学」という領域に「人間」という単元を設けています。 中学・高校の教科書は「人間の性と生殖」について生理学的に記述しており、母親の年齢と染色体異常の出現率、高年齢と妊娠の低下、不妊治療なども具体的に取り上げています。

ドイツでも13〜16歳用の「生物」の教科書に「初めての交際」という単元があり、最後にはコンドームやピルによる避妊方法が詳しく紹介されるといいます。

このことからもわかるように、子供から目をそむけさせるのではなく、妊娠する前にしっかりと教育をすることが教師や保護者の責任なのではないでしょうか。
間違った知識を持っている若者が増えている今、性教育が非常に重要なのです。

支援4:新たな選択肢、特別養子縁組

特別養子縁組とは、原則として6歳未満の子どもが保護や福祉を必要としている場合、実親との法律上の関係を消滅させ、裁判所の審判のもとで実の親子に準ずる親子関係を成立させる養子縁組制度です。
jiikでも以前、特別養子縁組についた記事を投稿しました。

ドラマ『はじめまして、愛しています。』で取り上げるテーマ『特別養子縁組制度』を知ろう。 | jiik

今夏テレビ朝日系列で放送される「はじめまして、愛しています。」は、特別養子縁組を題材に「本当の家族とは?」という普遍的なテーマが描かれます。いまいちど特別養子縁組制度に目を向けてみましょう。

出産後、経済的な理由などで子育てができない親が、子どもを別の夫婦の「実子」として育てもらう制度です。
産む覚悟をし、痛い思いをしながら出産した我が子を手放さなければならないという選択は、非常に辛いと思います。 私では想像もできない苦しみだと思います。

ただ今では、養子と産みの親を対面させる機会を設けるNPO法人もあります。 予期せぬ妊娠でお悩みの方と赤ちゃんを守り、温かい家庭への養子縁組(特別養子縁組)を仲介・あっせん・サポートをするNPO法人Babyぽけっとです。
個人的にはもちろん、養子を迎えた家族が一同に会するイベントで対面することもあります。

・双方が希望した場合のみ再会できる。
・出自を知り産みの親と育ての親への感謝を育む。

こういった条件と目的で再会を促しています。
子どもが幸せになるための選択肢として特別養子縁組を利用しても、親である事実は変わりません。

特定非営利活動法人★NPO Babyぽけっと

産んで下さい大切な命・輝く未来の宝物。予期せぬ妊娠でお悩みの方と赤ちゃんをお守りし、温かい家庭への養子縁組(特別養子縁組)を仲介・あっせん・サポート致します。助け合う心、愛と慈悲の心を持って支援・援助致します。ひとりで悩まないで下さい。明るい未来は必ずあります。特別養子縁組で新しい家族を築く会。第2種社会福祉事業・特定非営利活動法人ベビー救済★NPO Babyぽけっと

最後に

日本には子どもがいる世帯に対し多くの援助制度があります。
しかし、少子化を問題視しながらも、子育て給付金を廃止したり、妊娠が発覚したら事実上の退学処分にしたりと、まだまだ若い親に優しい国とは言えません。

学生妊娠を嫌悪し問題行動と位置づけ、退学処分などにしていたら、多くの人が不幸になります。
まずは事実を受け止め、妊娠した子どものために何ができるのか、前向きなサポートをすることが大切だと思います。

また妊娠した学生たちには、一人で心を閉ざさず、周囲の人たちのサポートを求めることが大事だと伝えです。
ときには家族にさえも辛辣な言葉を投げかけられるかもしれませんが、きっとあなたの声に耳を傾け、前向きな方法を一緒に模索してくれる人がいるはずです。

また、大人になれば知識の量が生きる力に直結します。
時間はかかってもいいので、ゆっくりと自分のペースで、高校を卒業できることを期待しています。