大人から子供に継がなければならないもの

日本では18歳からの選挙権付与や、9条を含む憲法改正論議のヒートアップ。また世界ではイスラム国による無差別テロが横行するなど、子供が多様な政治活動やテロの脅威を身近で目にする機会も増えています。
人間の命、宗教、人種、思想、暴力、政治などについて、小さい頃から親と共に学んだり、話し合ったりする環境を作っておくことの必要性は、日に日に増すばかりではないでしょうか。

今回は、きっとそんなシチュエーションで役立つヒントが詰まった、子育て世代にオススメしたい映画『奇跡の教室 受け継ぐ者たちへ』をご紹介します。

『奇跡の教室 受け継ぐ者たちへ』予告 8月6日公開 - YouTube

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貧困層が暮らすパリ郊外のレオン・ブルム高校の新学期。様々な人種の生徒たちが集められた落ちこぼれクラスに、厳格な歴史教師アンヌ・ゲゲンが赴任してくる。情熱的なアンヌ先生は、生徒たちを全国歴史コンクールに参加するように促すが、「アウシュヴィッツ」という難しいテーマに彼らは反発する。 ある日、アンヌ先生は、強制収容所の...

舞台は貧困層が暮らすパリ郊外にある私立高校。
様々な人種が集まる落ちこぼれクラスに、
教えることが大好きと公言する女性教師アンヌが赴任してきたところから物語は始まります。

Les héritiers - la critique du film + le test blu-ray

Les héritiers - la critique du film + le test blu-ray

歴史から見える今と未来

熱心な歴史教師のアンヌは、歴史という学問を通して物事の裏側に隠された真実に目を向けること、立場によって物事の見え方が異なることを、生徒たちに教えようと根気強く指導します。
中高で学ぶ歴史は

「勉強しても実際の生活では役に立たない」

と揶揄されるのを耳にすることも多い授業ではありますが、この映画ではアンヌ先生の歴史講義を通して、いま周りで起こっていることが、過去からずっと根ざしている問題であることを冷静な視点で説き、歴史を学ぶことの意義を訴えかけます。
また、今に残されている資料を使って歴史を丁寧に紐解くことで、立っている立場の違いや隠された真実を知ることが、物事を多面的に見ることに有益であることを的確に教えてくれます。
それは歴史という学問を越えて「生きる上で必要な全てに共通したものの見方」を養う講義でもあり、また人種や宗教が違う同級生との人間関係について、生徒たちが考えを深める手引きにもなっています。

Photo du film Les Héritiers - Photo 5 sur 11 - AlloCiné

Photo du film Les Héritiers - Photo 5 sur 11 - AlloCiné

歴史を学ぶことで現在の問題に関心を持ち、未来への解決策を模索しようとする力がつくなんて理想的な教育!
映画の後半、生徒たちの表情に少しずつ変化が見えてくるのは、こういった地道な指導が生徒の中に染み渡っていくからなのかもしれません。
ただの暗記ではない歴史の授業。
こんな授業をしてくれる先生に恵まれればラッキーですが、家庭でもまずは社会に興味を持ち一緒に調べ考えることから 是非チャレンジしたいところです。

見て・聞いて・感じて・考えて、人は成長するのだとスクリーンから体感できる

アンヌの地道な授業の成果か、生徒の中で少しずつ変わり始める芽が見え始めはしたものの、相変わらずの無気力で投げやりな態度が大きく変わることはありませんでした。
そんな中、アンヌは全国歴史コンクールに参加することを提案します。

テーマは「アウシュヴィッツ」

落ちこぼれの彼らをコンクールに参加させること自体無謀だと、周りの教師に冷笑されつつも、粘り強く彼らに指導するアンヌ。難しいテーマに反発したり怖気づいたりしながら、徐々に前向きに問題に取り組み始める生徒たちですが、自己本位な彼らはお互いを尊重したり、話し合ったりすることが出来ません。
そんな時、実際にアウシュヴィッツに収容された経験がある生き証人の話を聞くことになります。
彼の話から当時の悲惨な現実を肌で感じたことをきっかけに、生徒たちに大きな変化が現れ始めます。

Les Héritiers

Les Héritiers

アウシュヴィッツの資料館で、買い物に抜け出す予定も忘れて展示資料に見入る生徒の様子や、生き証人である老人の話に食い入るように真剣に耳を傾け涙を流す彼らの姿を見るに、彼らが実際に触れて見て聞いたことで多くのものを感じ取り、何かを考え始めたことがわかります。
生徒の心が揺り動かされる様子は、スクリーンを通して映画を観る者の心も揺り動かすのです。

アウシュヴィッツの記録や広島の原爆記念館など、戦争の生々しい記録を子供に見せることは残酷ではないかという考え方もあるかもしれません。しかしながら戦後70年が経過し、当時を知る方々も高齢化が進み、生き証人の声をどんなに聞きたくても聞くことができなくなる日も近づいています。
情報が溢れかえる現代、見せなければ大切なことも見ないで終わってしまいます。
この映画を観ると、「見せないこと」が子供の大きな成長の機会を失うことに繋がる気がしてなりません。

もちろん、ただ見せるだけではなく子供と一緒に感じて考えて話し合うことも大切な時間です。
この映画のタイトルは『奇跡の教室 受け継ぐ者たちへ』。
彼らが「受け継ぐ者たち」になる瞬間を是非スクリーンで目撃してください。