こどもだってミュージアム「Museum Start あいうえの」

「Museum Start あいうえの」はどういったプロジェクトですか

「Museum Start あいうえの」は、小学生から高校生までの幅広い年齢を対象とし、障害のあるこどもや、海外にルーツのあるこども、学校の授業で参加するこどもなど、様々な環境のこどもたちにミュージアム・デビューの機会をつくるプロジェクトです。

「あいうえの」では、こどもたちを対象とした様々なプログラムが用意されています。
例えばこどもたちが隔週で集まり、公園内の様々な文化施設を巡り作品鑑賞や創作活動をする「放課後のミュージアム」というプログラムがありました。学芸員やとびラーといった大人とこどもたちが、文化施設を舞台に共に学び合う貴重な時間となりました。

写真:オーケストラピットに入る貴重な体験!東京文化会館の様子

写真:国立科学博物館の展示に送られる真剣な眼差し

また、東京都美術館で金箔のほどこされた鶴の屏風を鑑賞した後に、隣の上野動物園で本物の鶴を見るなど、それぞれの文化施設にまたがったプログラムをデザインすることができるのも、上野公園から発信されるプロジェクトならではだといえます。

写真:金屏風鑑賞の様子

さらに、「Museum Start あいうえの」の各プログラムは、当日ワークショップを行なうだけではなく、準備の時間や終わった後に感想をとびラー同士で共有する時間を大切にしています。
こどもたち一人一人の名前をなるべくたくさん覚えたり、その子のことをよく理解しようとしたりと、とびラー同士のコミュニケーションが、プログラムをより豊かなものにしています。

こどもたちの探究心をくすぐるための工夫

「Museum Start あいうえの」の各種プログラムに参加したこどもたち全員に、ミュージアム・スタート・パックがプレゼントされます。このパックには、こどもたちが安心して冒険ができるように、ミュージアムでのマナーや冒険のヒントが書かれたオリジナルブックが入っています。
ブック片手にミュージアムを巡れば、連携する9つの館の缶バッジを集めることができる仕掛けになっており、こどもたちがミュージアムを楽しめる工夫がほどこされています。

Museum Start あいうえの

9つのミュージアムの扉を開こう。上野公園の魅力は、日本を代表する文化施設が歩いてまわれる範囲に集まっているということ。9つの文化施設が連携し、上野をこどもたちの”冒険の舞台”にしていきます。

また、「Museum Start あいうえの」のオフィシャルサイトには、「みんなの冒険の記録」というページがあります。
ここでは、これまでこどもたちが書いてくれた冒険の記録を見ることができます。
冒険の記録は誰でもウェブサイトに投稿することができるので、たくさんのこどもたちに是非アップしてほしいと思っています。こどもたちの好奇心溢れるブックは見ているだけで楽しくなります。(笑)

写真:子どもたちが記録を綴ったページ

こどもたちにとってのミュージアムとはなんですか

昔に比べるとこどもたちの教育環境は一見整ってきているように見えますが、6人に1人の割合で、貧困家庭に育つこどもがいると言われるのが日本の状況です。
こうした格差は、お金が無いから塾に行けない、お金が無いから美術館どころじゃないというように、教育の格差につながっています。そうした影響がこどもたちの将来すら方向付け、貧困のスパイラルを生んでいます。
私たちは、この現状をどこかで断ち切らなくてはいけないと思っています。

そこで、本年度から、経済的に困難を抱える家庭のこどもたちや、日本語が話せない家庭環境で育ち、日本の社会の中でカルチャー・ギャップを抱えていたり、情報弱者となっているこどもたちを支援するNPOと連携した「ミュージアム・トリップ」といプログラムをはじめましました。
より多くのこともたちにミュージアムを体験してもらい文化的な体験に触れるとともに、多様な大人たちと出会い、フラットな立場で対話をすることで、こどもたち自身が将来の自分をイメージする(ロールモデル)一助となればと思っています。

文化事業の本質というのは、大きな花火を打ち上げて、何千人もの人を一度に喜ばせるようなイベントごとにはありません。一つ一つの活動が社会に対しての「問い」になっていたり、何らかの社会的課題へ答えようとしているものです。
私たちの活動が後進のための良い前例となることを心がけるためにも、多様な価値観に触れ、自己を見つめ、世界との絆を深めるような、美術館の社会的な役割を形にしていく取組みを、より一層深化させてゆきたいと思っています。

取材を終えて

上野公園を舞台に展開する「とびらプロジェクト」と、連動する「Museum Start あいうえの」。
両プロジェクトについての取材を通して、意外にも、とかくわれわれが個性を求めがちな芸術から、いかに人間が社会的な存在であるかということを考えさせられました。
多様化する社会の中で、互いの価値観を共有し違いを認め合うことは、こどもの成長にとっても重要なことです。文化施設がその役割を担うという伊藤さんの思いのこめられた言葉からは、少し豊かになった未来を想像することができ、われわれもその意識を持って未来の主役たちを育てていかなくてはと感じました。

Museum Startあいうえのは、随時プログラム申込の受付をしています。
お子さんに、ここでしか味わえない貴重な体験をさせてあげてください。

東京都美術館 × 東京藝術大学「とびらプロジェクト」

「とびらプロジェクト」とは、東京都美術館と東京藝術大学が連携して行なっているアートを介してコミュニティを育む事業です。毎年広く一般からアート・コミュニケータ(愛称:とびラー)を募集しています。
とびラーは、学芸員や大学の教員、そして第一線で活躍中の専門家を中心としたプロジェクトチームと共に美術館を拠点に活動しています。人と作品、人と人、人と場所をつなぎ、美術館に集まる多種多様な人びととのコミュニケーションを大切にし、そこから生まれる新しい価値を社会に届けていきます。

Museum Start あいうえの

9つのミュージアムの扉を開こう。上野公園の魅力は、日本を代表する文化施設が歩いてまわれる範囲に集まっているということ。9つの文化施設が連携し、上野をこどもたちの”冒険の舞台”にしていきます。