判事室。
まだ6歳の主人公の少年マロニーが、母親に罵声を浴びせられ置き去りにされるところから物語は始まります。
幼い少年を保護する判事を演じるのは名優カトリーヌ・ドヌーヴ。所在なさげで不安に満ちた少年の表情とそれを見守る判事の深い眼差しが印象的です。
そして舞台は10年後。
16歳になった青年マロニーは問題行動を起こし再び判事の元へ。誰それ構わず悪態をつき荒れ狂い、相談員も匙を投げるほどの荒んだ様子の彼に再び手を差し伸べる判事。
その後も何度となく繰り返される問題行動。
信じては裏切られ、それでも信じて手を差し伸べ続ける…。

多くの出会いの中で少しずつ少しずつ成長していくマロニーを、繊細かつ大胆に演じるのは、本作がデビュー作であるロッド・パラド。本国ではアラン・ドロンの再来と呼ばれる逸材で、彼の演じるマロニーの深い悲しみに満ちた眼差しは圧巻で観るものの心を掴む作品となっています。

ではこの映画について「子育て」という視点から観たjiik編集部のオススメポイントをご紹介しましょう。

親の愛とは何なんだ?

この映画の紹介文には「親の愛を知らない少年が非行を繰り返す…」とあります。
この作品を観ていると果たして「親の愛」とは何なんだ?という思いに駆られます。
マロニーの母親は若くして父親の違う子供2人を育てるシングルマザーです。新しい彼とうまくいかないのは息子のせいだと暴れ、男に振られた夜は息子に泣きつく…。
彼女自体がまだ大人になりきれず、もがいている印象です。

子供のことよりも、自分が愛されたい想いばかりが先走ってしまう彼女ですが、決して子供を愛していないわけではないし、子供も母に愛されていないと思っているわけではない様子が画面から伺えます。
また時に「子供はおもちゃではない」「子育ては大変だ」息子にそう諭す母親と頷く息子の姿があります。
お互い頭ではそうわかっているけれど、こと自分が問題に直面すると混乱し苛立ち暴れてキれてしまう。またそんな自分に失望し、苛立ち、また荒れる。悪態をつきつつ、突き放しながらも不安で結局はお互いから離れられない。
不安定で歪な愛が過度な依存と愛への裏切りに対する、お互いへの報復(ネグレクトと反抗)を生んでいる構図が見え隠れします。

是枝裕和監督作品 『誰も知らない』でも描かれていましたが、今の日本でも同じような境遇の家庭が増えています。
家族のカタチはどんどん多様化し、問題を抱えた家庭にそれぞれの家族なりの「不安定な愛情」があったとしても、当事者である家族だけではその構図から抜け出すのは難しいのかもしれません。

では、そんな家族関係から浮かび上がる、
彼に必要だったが与えられなかった本当の「親の愛」とは、どんな愛なのでしょうか。

見返りを求めない愛?
与え続ける愛?見守る愛?

映画の中で彼らに手を差し伸べる判事、相談員や指導員、施設の職員が彼に何を与えたのか、何によって彼が変わり始めたのかという点に注目することは、子供を育む「親の愛」について理解するヒントになるように感じました。
物語のラストで「親の愛」に極めて近い愛を得たマロニーの表情は、「不安定な愛」と「親の愛」の違いを理解することが「不安定な愛」の連鎖を防ぐひとつの方法であることを示唆してくれます。
あなたのお子さんへの愛は「親の愛」ですか?
是非映画を観て「親の愛」について考えてみてください。

次項では、この映画で語られた「子供の居場所」について考えます。

子供の居場所はありますか?

度々の問題行動が原因で、マロニーは親元を離れ更生施設で生活することになります。
それまでの学校での生活で彼の「居場所」があったとは思えません。
新しい環境で新しい出会いがあり、自分の「居場所」ができたことで常にヤマアラシのように刺だっていた彼の心に少しずつ変化が見られるようになります。

外の世界で自分の居場所をうまく見つけられない子供が不登校になる、家に居場所を見つけられない子供が非行に走るというケースは、日常的に起こりうる問題として身近に潜んでいます。
核家族化が進む今日、自ら望まなければ閉鎖的になりがちな子育て環境の中、そんな状況にぶつかった際、親としては何が出来るのでしょうか。
また、そんな状況に陥りにくいよう子育てにおいて心がけておけることはないのでしょうか?

ひとつのヒントとしてこの映画が教えてくれるのは、親以外の大人と触れ合う機会が子供にとってよい刺激になるということです。
多くの価値観に触れ、たくさんの人の生活や人生を肌に感じて知ることで他人と共感できたり、模倣したり、学んだりする力が身につくということ、また世界が広がる中で多様な「自分の居場所」ができる可能性が増えるということは、子供にとってプラスと言えるのではないでしょうか。
あんなに荒んでいたマロニーが映画後半、教育係のヤンの哀しみに寄り添うような表情をみせた時、ヤンの存在が彼の大きな成長に少なからず影響しているのだと感じずにはいられません。

映画を観るとき純粋に「面白かった」でももちろんOKですが、時には少し変わった視点で観てみると新しい発見があります。是非試してみて下さい!

映画『太陽のめざめ』予告編 - YouTube

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