本屋の仕事とは?店主と客の関係を考えさせられる絵本

フランスの絵本『水曜日の本屋さん』は、郊外の大型店やネット通販が主流の日本からは、想像しにくい本屋の話です。
主人公は小学生の女の子で、毎週水曜にとある本屋へ通っています。そこには、毎回同じ本を手に持つ客の老紳士がいて、ソファに座って読書の時間を過ごします。

絵本を読みながらクスクス笑う女の子のそばでは、老紳士がハンカチで涙をぬぐう場面もあります。
クリスマス前の店内は装飾がほどこされ、いつものように老紳士は目的の本を探しますが、書棚には陳列されていないようです。それに気づいた女の子が一緒に探すのですが見つかりません。

そこへ店主の女性が、

「今朝、クリスマスプレゼントに売れましたよ」

と伝えます。

Mercredi à la librairie | Éditions Sarbacane

Mercredi à la librairie | Éditions Sarbacane

Sylvie Neeman : Mercredi à la librairie

Sylvie Neeman : Mercredi à la librairie

※画像は原題「Mercredi à la librairie」のもの

本屋のおねえさんがやってきて、
「マルヌの戦いについての本をおさがしですか?」とたずねた。
「そうなんです」
「あの本は、今朝、売れました。クリスマス・プレゼントに」
「ああ、もうすぐクリスマスですからね」
わたしはクリスマスってきくと、たくさんのお星さまが目にうかぶ。
でもおじいさんは、大きな袋をしょわされたように背中をまるめた。
何がはいっているの、その袋?
―本文引用

上記の「マルヌの戦い」とは、1914年9月にフランス軍とドイツ軍との間に起こった戦いだそうです。
老紳士が読んでいた本は、その戦争に関する本だったことがわかります。
結末を話してしまうと読む楽しみがなくなるので書きませんが、店主の心憎い演出が感動的な作品。
スイス生まれのシルヴィ・ネーマンが紡ぐ文章に、フランス生まれのイラストレーター、オリヴィエ・タレックが創りだす陰影が物語に深みを与えています。

個人的には、幼い子どもが客と店主の関係を考える必用はないかと思います。けれど、マニュアル通りの接客や、クリック一つで目的の商品を購入するのとは別種の付き合い方を『水曜日の本屋』はおしえてくれます。
客の好みを把握し、客が必要としているときに行動する店主を描いた本作は、数ある絵本のなかで稀な存在だといえます。

水曜日の本屋さん | シルヴィ ネーマン, オリヴィエ タレック, Sylvie Neeman, Olivier Tallec, 平岡 敦 |本 | 通販 | Amazon

水曜日は学校がお休み。だからわたしはいつも本屋さんへいく。するとあのおじいさんも、きまって店にきた。どうしてそんな本を読むの?そんなに好きな本なら、どうして買わないの…。

町のなかで見つける、店とそこで働く人たち

『町たんけん はたらく人 みつけた』は読み物ではなく、マンガのように「ふきだし」のしゃべり言葉を読んで楽しむ絵本です。

小学生の数人と先生が探検と称して、町を見学しに行くところからページは始まります。
町の俯瞰図があったり、人びとの生活の声が聞こえてきたりとおもしろい要素がいっぱいです。
実店舗のほかに、屋台での販売、引っ越し業者の積み下ろし作業、工事の現場作業、ビルのなか(1階が洋装店、2階が飲食店、3階が事務所)を描きだします。子どもがすでに知っているお店屋さんや職種以外にも、世の中にはさまざまな店や職業があることがわかります。

作者の秋山とも子はあとがきで、次のように語りかけます。

ふだん見なれている町や通りも、あらためてよく見ると、いろんな人たちがはたらいていたり、いろいろなくらしや物語があります。あなたも学校や家のまわりのたんけんに、出かけてみてくださいね。
―あとがき引用

未就学児や小学校低学年までは行動範囲が狭いため、大人が付き添わなければ探検はなかなか叶いません。
親子で『町たんけん はたらく人みつけた』を読んだあとは、外へ出て、近所を歩いてみませんか。ふだんは用事のない場所、立ち寄る必要のない通りも子どもにとっては発見がたくさんあるはず。
お店屋さんを探すのもいいけれど、今まで出会うことがなかった人や物を見つけられるとうれしいものです。

町たんけん―はたらく人みつけた (みぢかなかがく) | 秋山 とも子 |本 | 通販 | Amazon

町の様子を丁寧に描き出した絵本。登場する人々にふき出しをつけて、町で生活している人々の声を生き生きと伝える。どんな家や店があって、どんな仕事をしている人たちがいるのか、いっしょに探検できる。

京都の町家を徹底解剖。巻末の「ものしり手帖」も読み忘れずに!

『町家えほん』は、京都の町家を改築した「カフェ桜」を舞台にしたお話です。
店主の福ねこと店員のお豆さんが町家を案内してくれ、読者(客)と一緒に「蔵」「はしりにわ」「とおりにわ」などを説明しながら歩きます。

「つづいてお2階へ
ご案内します。
階段が急やさかい、
気ぃつけておくれやっしゃ」

階段の一番上に
戸がついていて、
開けて2階へ上がります。
寒い日に、
1階のあたたかい空気が
2階へにげないための
工夫です。
―本文引用

小学校低学年の子に読み聞かせをすると、

「お豆さんと探検したーい」

という感想がよく聞かれます。
現代の一軒家ともマンションとも異なる造りの町家は、子どもたちの好奇心を刺激するようです。
巻末には、12ページ分の「町家ものしり手帖」が付いています。町家の歴史、戸の防犯対策など高学年向きに解説されています。

読み聞かせする大人のほうが夢中になって、挿絵と説明文を読んでしまうような内容です。
たとえば、「格子でわかるお商売」では、繊維業界(糸屋、紐屋、呉服屋)が糸屋格子であることをおしえてくれます。
縦の桟を数本ごとに短くすると上から光が多く入るようになっている工夫があるそうです。
麩屋格子や炭屋格子、酒屋格子など商売によって格子が違うことがわかります。時代劇ドラマを見るときや京都へ行ったとき、本当にそのような工夫があるかをチェックしたいものです。

町家えほん (たのしいちしきえほん) | 松井 薫, 山口 珠瑛 作/絵 |本 | 通販 | Amazon

ようおこしやす。おもてで商い、奥で生活をする和の住まい、京町家。「カフェ桜」の福ねこさんとお豆さんが、ご案内します。