0才から子どもがはじめてであう絵本

幼稚園や保育園を通して、希望者が定期購読する絵本があります。
我が家は一年だけ、福音館書店が発行するディック・ブルーナ作品を注文したことがありました。
毎月700円を園の事務の先生に渡し、月末になると、子どもの黄色の幼稚園バッグに絵本を入れてもらえる仕組みです。

定期購読をしてから気づいたのですが、うさこちゃんのほかにも登場人物がいて、それぞれにお話があることわかりました。ブルーナ・カラーで彩られた表紙には、イヌやネコ、お百姓の男の子までいるのです。
今回は、石井桃子訳『ふしぎな たまご』と松岡享子訳『もっと ほんが よめるの』を紹介します。
1964年発行の『ふしぎな たまご』は、一つのたまごをめぐるお話で、リズムのよい美しい日本語が印象的な一冊です。

『ふしぎなたまご』

みどりの のはらに ゆきのような
まっしろい たまごが おちていた。
いったい だれの たまごでしょう。
だあれも それを しりません。
―本文引用

うさこちゃんシリーズでもおなじみの構成で、お話の右隣に一枚の挿絵があります。
ぬくもりある手描きの黒線に、たまごの白、野原の緑、空の青がシンプルに描かれています。
ページをめくると、メンドリやオンドリ、ネコまでがたまごは自分のものだと主張します。
乳幼児の読者にしてみれば、オンドリとネコがたまごの親でもよさそうですが、イヌが「わらわせないでくれたまえ」と一蹴します。それと同時に、たまごに割れ目が生じます。

なかに いたのは めんどりでも
おんどりでも ねこでもない。
かわいい あひるの あかんぼでした。
ええ そうですよ ごらんなさい。
―本文引用

種類は異なれど、生まれたばかりの赤ん坊にネコもオンドリもメンドリも食事を持ち寄り、アヒルの面倒をみるのです。すくすく育つ赤ん坊が可愛くてしかたがないのでしょう。
親子で読めば動物の話題を、親一人で読めば我が子の周りにいるさまざまな人たちに想いを馳せることになります。やはり、人も動物も一人(匹)では生きていけませんから。

『もっと ほんが よめるの』

『もっと ほんが よめるの』は幼女が主人公の絵本です。
身近にあるものの名前を伝え、それを必要とするときや使うときをおしえてくれます。
冒頭がよくて、読んでみよう、聞いてみようという気になります。短い文章ゆえに、翻訳の素晴らしさがわかります。

わたし ほんが よめるの
もっと よんで みましょうか
―本文引用

先ほど紹介した『ふしぎな たまご』には句点がありましたが、こちらにはありません。
句点がないことで、絵本の趣旨でもある簡潔さが際立ちます。
家や椅子、スプーンにフォーク、乳幼児に言葉を一つひとつおしえるようにページもすすみます。

これは はな
はなを つんで
おかあさんに あげる
―本文引用

白の花びらの中心に黄色の花粉、茎と緑の葉。
こちらも黒線と3色で統一されています。
膝のうえにちょこんと乗せて読み聞かせをしている子が、道端の花を摘めるぐらい成長するのが今から楽しみですよね。
短文でも情景は浮かぶものです。乳幼児のものだからと軽く流さず、丁寧に読みこむことで、絵本には描かれていない自分や子どもの姿を見ることができます。