かこさとしの代表作といえば、1973年初版の『からすのパンやさん』

ねむりねこみけのお手紙の日々 秋実さんから2通届いています♪

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30年ほど前、わたしのお気に入りの絵本は『からすのパンやさん』でした。
繰り返し読んでもらったはずですが、覚えているのはストーリーではなく、見開きいっぱいに並んでいるさまざまな形をしたパンの絵です。動物も乗り物も食べ物も一堂に集まり、

「今日はこれとあれを食べる!」

と指さしていた幼いころの自分の姿がよみがえります。

第一子の妊娠がわかったとき、はじめに購入したのは肌着でも玩具でもなく、新品のその一冊。
カラスの両親に挟まれるようにして焼けたパンがちょこんと置いてある絵――書店で見つけた表紙はあの頃と変わらず、幸せのにおいを漂わせていました。
6歳になった長男は『からすのパンやさん』を大切にしていて、定期的に本棚から引っぱりだしては、

「おれは、とうもろこしパン!」

と母親の幼少時代を再現してくれています。
親になって読み聞かせをしていると気づくのが、文章も素敵だということ。

みんなは、
パンの こなを
えっさか
ほっさかねりました。

それから、
ねった こなを
ころころ
ぽてぽて
まるめました。

その
まるめた こなを、
かまどに
わっさか
わっせと
いれました。

リズム感はもちろんだけれど、

「えっさ、ほっさ」
「わっさ、わっせ」

という響きは、作業台で奮闘する親子の姿が挿絵以上に表れています。
カラスを擬人化しても、まったくおかしくなく、むしろ自然の動作や会話のように思えるから不思議です。
物語の後半も魔法にかかったような文章が続きます。

あなたが しらない
もりの なかで、
どこからか
こうばしい おいしい
においがしたら、
もりの うえのほうを
みてごらんなさい。

家の近くに森や林がなくても、六羽の家族がすぐそこで暮らしているのではないかと、大人のわたしでも錯覚してしまいます。わが家のように、育児に家事に仕事にとがんばっているカラスの両親と気持ちを分かち合いたくなるのです。

読み聞かせをする大人にとっても、心があたたかくなる絵本です。
このような絵と話が求められ続け、ロングセラーになるのだと納得できる一冊です。

からすのパンやさん (かこさとしおはなしのほん (7)) | 加古 里子 |本 | 通販 | Amazon

思わず目を奪われる「たのしい おいしい パン」の見開きページには、80種類以上ものパンが描かれている。いちごパン、ゆきだるまパンなどなじみのある形のものもあれば、ヘリコプターパン、はぶらしパン、さざえパンなどなかなかパンにしないような形のものまで、こんがりと色づいて並んでいる。